福岡地方裁判所飯塚支部 昭和44年(わ)9号・昭43年(わ)193号・昭43年(わ)221号 判決
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〔判決理由〕被告人の判示各所為はいずれも刑法一七六条後段に該当するが、以上は同法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により、犯情最も重い判示29の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年二月に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数の全部を右の刑に算入することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八条一項本文を適用して、全部これを被告人に負担させる。
なお、量刑の諸因子のうち、被告人の再犯の可能性の一点に着目するときは、一件記録中国谷次夫他一名作成の鑑定書も指摘するように、被告人の犯罪性が抜きがたいと云うほどのものでない以上、たとえば本件各犯行の重要な一因をなした妻との性生活の異常を調整し、家庭生活の安定改善を図る等の適当なライフ・ガイダンスを与えれば、被告人の再起の決意と相応の能力、ならびに家庭および職場の受け入れ態度等にかんがみて、それはさして難事というべきほどのものではないであろう。また被告人を本件各犯行に追いやつた事情を、その主観的、客観的環境を介して被告人のパーソナリティの中に理解せんと努めるときは、必ずしもそれは著しく困難というほどのものとも思われない。その他にも被告人をして実刑を免れしめる方向に働らく因子は、いくつか存しないわけではない。
しかしながら、ひとしく強制わいせつ行為とは称しても一般に本件のごとき児童に対するわいせつ行為は、他の被害者に対する行為とは量刑の基準を異にすべき相当の根拠が存する。けだしわいせつ犯罪の被害者には生活態度に緊張感を欠くなど、なんらかの隙があり、痴漢を乗ぜしめたというべき点の非難を甘受すべきものが少なくないことは、すでに実証的に明らかにされているところであるが、これに対し、児童はいまだ思慮浅薄であり、自から社会的に生活態度を律しうるとしても、その範囲は概して狭少であつて、右のごとき潜在的な被害性を推測することは困難と思われるがゆえである。このことは被告人がわいせつ行為の相手方とすべき児童を、ほとんどその体格のみによつて選別決定していること、かかる児童のほととんど全てが確実に被害を受けていることに徴し、本件についても実証されたものと云えよう。
然るときは、被告人が児童の無邪気な信頼を逆用し、児童の口をもつて性欲のはけ口となし、いわんや少なからざる場合その口中に射精し、かかる行為を常習的に反覆累行したのは、最も卑しむべく、憎むべき行為と解すべく、世に嫌悪の情を催さしめる。
それゆえ、その他諸般の事情を勘案して、前記のごとく量刑した。(橋本喜一)